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子どもの喘息(ぜんそく) 症状と対応
小児ぜんそくの子どもたちが増えているようです。ぜんそく(喘息)の発作が起こると「ヒューヒュー」、「ゼーゼー」といった激しい咳をし、呼吸困難な状態になるため、子どもにとってもとても苦しく、そばで見ている家族もつらいものです。
今回は子どものぜんそくについてお伝えします。
小児ぜんそくを発症する年齢
小児ぜんそくの発病年齢は2歳以下が約60%、小学校入学前の6歳以下では約90%と言われています。しかし、小児ぜんそくは、成長するにつれて症状が軽くなっていき、女の子は小学校の高学年で、男の子は中学2年頃に治ってくるケースが多く、中学時代には半数の子どもが治るといわれています。小児ぜんそくは、いずれ治ることを信じて、いかに発作回数を少なくしてあげるかが大切です。
ぜんそく発作が起こるメカニズム
ぜんそくは、次のようなメカニズムによって起こります。
〇気道が過敏になっている
気道の過敏性とは、冷たい空気を吸ったり、笑ったり、泣いたり、また急に走ったりしたときに、気道が過敏に反応してしまうことです。この気道が過敏でなければ何らかの刺激があっても、ぜんそくの発作は起こりません。この気道過敏性は、ぜんそく発作の重症度と関連しています。
〇気道が炎症を起こしている
アレルギーの原因となるダニ、ハウスダスト、動物の毛、フケ、カビなどを吸い込んだ場合に、過敏に反応して気管支粘膜で免疫反応が起こり、気道が炎症を起こします。すると気道が狭くなるためぜんそくの発作を起こしやすくなるほか、痰がからんだり、顔がむくむこともあります。
〇気流制限が起こる
気道が慢性的に炎症を起こしていると、やがて気管壁が硬くなり、空気の通り道が狭くなります。「気道リモデリング」と言われるものですが、そうなると気道がいつも狭く、ぜんめいや呼吸困難が起こりやすくなります。長期間続くと、気管壁の線維化や平滑筋の肥厚がおこり肺機能が低下することがあります。
このように、小児ぜんそくの発作は、気道の炎症が進んで気道が狭くなった場合に起こります。また、発作が起こると気道はさらに狭くなり、痰がたくさん出てきて、狭くなった気道をさらにふさごうとするので、「ヒューヒュー」、「ゼーゼー」といった苦しい呼吸困難が起こるのです。
発作が起こると気道の内側の細胞がはがれ、刺激を感じる神経がむき出しになってしまうため、気道がさらに過敏になってしまい、発作を起こしやすくなるという悪循環に陥ってしまうのです。
小児ぜんそくの発作を引き起こす要因
小児ぜんそくの発作を引き起こす要因として、次のようなものがあげられます。
- 吸入アレルゲン
ダニ、カビ、花粉、ハウスダスト、猫や犬などの動物の毛などを吸い込んだときに発作を起こします。
- 食物アレルゲン
卵、牛乳、小麦、大豆、米、そば、ピーナッツ、アーモンド、海産物、魚介類、果物類などを食べたときに発作を起こします。
- 呼吸器感染
- 風邪やインフルエンザ、気管支炎、肺炎、副鼻腔炎などは、ぜんそく発作の誘因として最も多いと言われます。またマイコプラズマ、クラミジア、百日咳などが誘因となることがあります。
- 大気汚染
車の排ガス、暖房器具から発生する窒素酸化物、建材に使用されるホルムアルデヒドなど。
- タバコの煙
受動喫煙による有害物質など。
- 食品添加物
食品添加物の亜硫酸塩は気道過敏反応を起こすことがあります。
- 運動
運動により、呼吸量、呼吸数が増え、急に気管支粘膜が冷えたり、乾燥するとそれが刺激となって気道収縮がおこります。
「運動誘発性喘息」と呼ばれます。この場合、多くは運動を中止して静かにしているとおさまってきます。
- ストレス
精神的な悩みや心理的葛藤など、子供がかかえているストレスがぜんそく発作の誘因となることがあります。
- 気圧の変化
台風の接近など、気圧の変化がぜんそくの発作を引き起こすことがあります。また、晴れている日より、雨の日にぜんそくの発作を起こす事が多いとされています。
- 激しい感情表現
大声で笑ったときや、激しく泣いたときなどにぜんそくの発作を起こすことがあります。
- 薬の服用
大人の場合、アスピリンと非ステロイド系抗炎症薬の服用によりぜんそくの発作を起こすことがありますが、子供の場合もまれに起こすことがあります。
小児ぜんそくは、多くの場合成長するにつれて治ってきますが、発作を引き起こす要因をできるだけ取り除いてあげることが大切です。それにより、発作の回数も減り症状の軽減、早期の治癒へとつながります。
小児ぜんそくの発作時の対処法
ぜんそく発作で、呼吸困難に陥ると家族もどうしたらよいかわからなくなってしまいますが、子どものためにも落ち着いて対処してください。子どもを安心させ、症状を軽くしてあげるためには、家族の協力が何よりも大切です。
ぜんそくの発作が起こる場合、前ぶれのような症状が出ることがあります。
鼻がつまっている、鼻水が出る、涙目の症状がある、のどの不快感を訴える、疲れた様子が見られる、感情が高ぶっているなどの症状が前ぶれとして現れやすいので、注意してあげてください。
ぜんそくの発作が起こる時間帯は、夜間や明け方が多くなります。
最初は軽い咳ですが、だんだん息をするのが苦しくなり、肩を上げたり、鎖骨の上やみぞおちの部分をへこませながら呼吸をするようになります。
「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった激しい咳が続き、呼吸困難になったり、唇や口の周囲が青紫色になるチアノーゼを起こすこともあります。
ぜんそくの発作が起きたら、家族の方はまず落ち着いて次のような対処法を行ってください。
①呼吸を少しでも楽にするため、横に寝かせておくより、座らせてください。背中の部分に座布団を折ったものを入れて、支えてあげるとより楽になります。
②衣服をゆるめて、腹式呼吸でゆっくりと深呼吸を何度かさせてください。腹式呼吸がうまくできない場合は、背中や腰をさすって安心させ、呼吸を整えさせて、少しづつ水分をとらせます。
③ゼーゼーして呼吸が苦しそうな時は、気管支拡張剤の吸入を行ってください。吸入した後、一時間くらいしても発作が治まらない場合は、もう一度吸入を行います。小さな子どもの場合は、飲み薬や気管支拡張剤のテープがありますので、体に貼って様子をみましょう。
※上記のような対応をしても発作がおさまらず、呼吸困難がひどくなって吐いたり、唇や口の周りが青紫色になるチアノーゼの症状が見られる場合は、病院で速やかに医師の診察を受けましょう。
(家族みんなの健康百科参考)
家族からの情報が大切
「ゼーゼー」「ヒューヒュー」は夜間や明け方、または運動後に見られることが多いので、受診した時に医師に喘鳴が聞こえるとは限りません。子どもと一緒に生活している家族が普段お症状を出来るだけ正確に医師に伝えることが大切です。
いつ、どこで、どんな時、どの程度の喘鳴があったかなど、正確に医師に伝えることが出来るようにメモしておきましょう。
また小児ぜんそくは、アレルギーの影響ということもあるので、食事内容も一緒に伝えられるようにしておきましょう。
秋からの乾燥する季節に発症しやすい『子どものぜんそく』、出来るだけ発症しないように工夫して過ごしたいですね。